A Note

^_^


これはDieselの新しい香水の広告らしくて、といってももう何ヶ月か前の去年には既にWebへ上げられていたものだけど、その名前は「Loverdose」というらしい。この名前が愛(Love)の過剰摂取(Overdose)という二語を組み合わせた、セクシーかつお洒落、を意図した造語なんだろうと想像することは容易だ。ありがちといえばありがちな。

ビデオ自体は別に悪くない、と思うと同時にそんなに面白いものとも思わないし、類型的だなと感じるし、既視感もある。それほど印象的なものではない。むしろ僕に印象的だったのは、主演の女優か、それともモデルか、その女性の前歯の中央に誰でも簡単に分かるくらい大きな隙間があること(本当にまるでウサギのように目立つ二本の前歯!)

アメリカ人は歯並びをとても気にする人たちだという情報は知っていて、また別にここ日本でも、これだけ大きく間隔の開いた前歯というのは、とても稀有だと思う。ましてモデルや女優といったまず第一に自分の容姿で金を稼ぐ職種の人であるならなおさら。

つまり彼女の歯並びは一般的に美しいとされる美の基準からは大きく逸脱している、と思う。しかし言うまでもなく何が美しいとされるか、その基準はその社会が共有する文脈によってまったく違う。また歴史が移ろえば変わってもしまう。

僕はこの種の歯並びの持ち主が美しいとされて大きなファッションブランドの広告に起用されるということそのものについて賛成だし面白いと思った。またこの広告に主演する彼女が圧倒的なカリスマと人気を持つなら、彼女個人が逆に美を判定する社会的な文脈のほうをねじ曲げてしまう可能性はあるし、その状況は想定できる。

つまり具体的に書くと、アメリカのティーンの世代の女の子が、彼女の持つような、間に大きく隙間の開いたウサギのように目立つ二本の前歯を欲しがるようになるかもしれないし、もしそうなれば美しさの基準は変わり始めていると考えていい。もちろんそれが一時的な潮流か永続的な変化かは分からないが。

印象的な前歯だ。彼女の前世はウサギだったのではないだろうか?(しかしキリスト教圏に前世という概念はあるのか?)