A Note

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ケープタウンの空港でロンドン行きの搭乗手続きをするフランス代表のアネルカ=ロイター


絵になる男アネルカ。ワールドクラスのスポーツ選手はその存在感からして違う。フランス代表がチームとしてほぼ完全に崩壊しかけている今、一人放逐されての帰国となった。フランスのサッカー史にその跡を残すだろう事態が南アフリカで進行している、もちろん最も不名誉な意味において。

一度はアンリがその手でアイルランドから上手に盗み、胸をなで下ろすことができたこのWorld Cupへの出場権だったが、事ここへ至っては単にパリ発地獄行きのチケットだったとしか思えない。それとも彼の手がボールに触れたその瞬間に、ある種の時限式の呪いがフランス代表を対象として設定されたのか? 公正さの原理から言ってフランスを勝たせることはできないと。

いずれにせよ、今やフランスが決勝トーナメントへ進むためには奇跡が必要であり、そして監督であるドメネクは少なくとも今後何ヶ月かの間、大手を振ってフランスの都会を歩くことができないだろう。ただ僕には考えがある。ドメネクに日本の "オヘンロ" を輸出して教えてあげたらどうなのか? 日本人は大きな挫折を味わったとき山の中をひたすら歩きたくなることがある。フランス人にだってそれがフィットしないとも限らない。パリの街中は駄目でも、ドメネクだってフランスの田舎の、山の中なら歩けるさ、つまり思う存分にオヘンロならできる…。

World Cup後しばらくしてドメネクのオヘンロ姿がフランスの片田舎で撮影されゴシップ誌に掲載された。彼の孤独だが決然とした姿がドメネクをボロクソに言っていた人々の間にさえ哀れみと共感を巻き起こした。それに付随してフランス人にオヘンロなる行動様式への興味も生まれたのだ。それは新たに日本からやってきた文物として、ゲイシャ、ヘンタイに引き続きフランスで一大ブームとなった。