A Note

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野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)

野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)

独特の斜に構えた世界観と、全編を貫く強烈な皮肉とユーモアに、作家の真骨頂がある。

ボラーニョの小説が新たに訳された。"野生の探偵たち"。英題を "The Savage Detectives" という本だ。評判から推測して彼の最高の小説であるらしい "2999 2666" もいつかは誰かが日本語にしてくれるだろう。僕は勝手にこの作家は自分の仲間だと思っている。ウエルベックに関してもそう思っているが、二人に共通しているのはどちらもひねくれたやつだということだ。それもおそろしく。しかし作家というのは僕の考えでは、この地上でどれだけ痛めつけられようとただ乾いた残酷さのみを持って世界へ向き合うことには失敗した人種であり、従ってそれほどおそれるべき存在でもないような気がする。そこで思い切れないことは生来の人のよさを表すのではないかと思うからだ。

彼らがもし人間を罵倒し、嘲笑し、皮肉るとしてもそれと同時にまさにその人間に愛情の残りかすを求めているし、一切の希望を捨てて "地獄編" を生きることもできない。そんな愛すべきひねくれ者たちの価値を弁護してみよう。彼・彼女らはもちろん時として意地悪ではあるがそれだけではない。つまりこの世界へ与えようとして裏切られ、受け取り人不明で返ってきた愛情を今度は皮肉や風刺の形へと変換し、ある程度は鑑賞に耐える水準まで高めてから再び世界へ施しているのだ。草の根のリサイクル活動ともいえそうだ。そして、わざわざ労力をかけてそんなことをするのはいわゆる "いい人" だからではないか、という解釈も成り立つ…


BGM: 久保田利伸 "La La La Love Song"

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昨日のオランダ戦で喫した唯一の失点のシーン。そのプレーの精密さがまるで腕の良い外科医のような印象をもたらすオランダ人スナイデルの放った高速なシュートに対してGKの川島はパンチングを選択したが、きちんとはじき返すことができずにゴール側に逸らしてしまい、残念にも点を失った。その直後はこれは川島のミスだろうなと思ったのだが、それから何分かして、これを果たして川島のミスと呼ぶべきだろうかと考えはじめた。というのは、やはりこれまでにも何試合かで各国代表チームGKの悪夢となってきた新たなボールである、ジャブラニの示す特有の挙動が彼の後逸に関係していた可能性を思い出したからだ。それともボールとは無関係にあれはミスで、そのことは揺るがないだろうか。

しかし僕はGKをやったことがないので結局あまり偉そうなことは言えない。もし自分がスナイデルのあんな砲弾のようなシュートを正面で受けろと言われてその立場になればもう生きた心地もしないだろう。死んだふりでも何でもしてその拷問を回避しようとするだろう。ところがたとえ僕がスナイデルのキャノンを顔面に食らって死んでも、カメルーン戦を勝っておけた日本はまだ死んでいない。それどころかオランダ戦の後でWebに上げられた各紙の記事を読んでいてあっと思ったのは、得失点差の関係でデンマークは次の日本との試合を勝たなければ敗退が決まるのだ。つまりデンマークにとって次の日本戦を引き分けることは負けに等しく、逆に日本にとって引き分けは勝ちに同等だ。なるほどね。たしかに有利な状況だ。そしてもちろんそんなことは忘れてデンマークには勝ちにいってくれることを望む。