A Note

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緑黄色人種

緑黄色人種

増加する人口 働くことが唯一の信仰
資本主義 日本信用金庫


Shing02 - "¥都(Yentown)"


"Luv (sic) pt.2" でしか彼を知らない人はこのアルバムを聞いてみよう。セックスの前戯で使えるほど素晴らしく甘い曲を作れると同時に、恐ろしい毒を身のうちに宿した人間でもあるということが分かる。ラッパーだろうと画家だろうと小説家だろうと、表現者になるためにはその毒が絶対に必要だ。Shing02の "緑黄色人種" を聞いてた。元のCDそのものはどこかにいってしまったんだけど、PCに昔作ったmp3が残っている。彼のアルバムでまともに聞いたことがあるのはこの一枚だけなんだけど、これは控えめに言っても魂も愛も怨念も込められた音と声からなる誰も殺さない爆弾のようなアルバムで、いつか真面目に一曲ずつ批評を書いてみたいと思わせるそれだけの力を持つ作品だ。2枚組のアルバムの中に様々な曲、文明批評があり、駄洒落があり、おとぎ話があり、自殺者の心理描写がある。例えば上に掲げた引用はDisc1の3曲目からの歌詞だが僕にとってはその通りだと思えるし言い得ている。日本人は宗教を持たない人々であると言われるが、日本人にも宗教はあるのだ。それは働くことだ。今や "Karoshi" が世界語であるということを知っている人は多いだろうが、日本人でない人々にとっては働き過ぎて死んでしまう人間などとても理解できずに、きっととても驚いたことだろう。僕は日本人だが僕にも理解できない。人生のために仕事があるわけで、仕事のために人生があるわけではない。人間は働き過ぎで死ぬ必要はない。日本人のそういうところは本当に下らない。働き過ぎで死んでしまう人たちが下らないというのではなくて、そういう人たちはただ気の毒だ。そうではなくて、これは例え一人が軽んじてもどうにもならない堅固なシステムに対する怒りだ。人間にはもっと別のやり方があるはずだ。自殺者が多すぎる。働き過ぎで死んでしまう。日本人。今より金はなくなっても一ヶ月くらいバカンスを取って休めたり家族と遊ぶ時間を十分に取れたりするやり方を探す日本人…

その種の批評的なリリックもあるのだがShing02には重要な要素として笑いがあるのだ。重苦しい曲を歌えるし笑いもある。それはいいことで、僕はユーモアは高く評価したい。誰かを笑わせることができたり、自分を馬鹿にしたりすることができるというのは大切なことだ。誰かが絶望に抗おうとするとき、その人に与えられた武器は笑いだけだ。ユーモアは本物の絶望を治療しないかもしれないが、それでもさしあたって生きていくためには笑いがあったほうがいいし楽しい。そのうち一曲ずつ感想文を書いてみたいが、何かをやりたいと書いたことは絶対にやらないのでどうだろう… 勝つも負けるも人生ゲーム 食うも食われるも人生ゲーム 近道寄り道人生ゲーム 進むも戻るも人生ゲーム