音楽の話。DACの話。MojoってDACが5年前に発売されて、音好きの間ではある種の事件になった。基本的には今まで聞いたことのない素晴らしい音を出すという絶賛。
けどYoutubeで2016年発表のDACチップES9038Proと比べて聞くとそれほど良くないなと。まだ実機で聞いたことがないけどMojoが何をするのか分かった。ただES9038Proはチップ1つが1万円くらいする最上級DACで、製品になるときには20万円からの値段が付くから5万円で買えるMojoと同じクラスで競合するものではない。
Mojoのやり方は既成のDACチップを使わないで、その代わりにもっとパワーのあるプロセッサ積んで、その上で自前で組んだアルゴリズム走らせてアップサンプリングをたくさん頑張る。
他の条件を同一に保った上でMojoとES9038Proとを比べて、DSD音源のノラ・ジョーンズを鳴らしてマイクで収録した動画が下。
音が好みの問題であることは言うまでもないけど自分の判定はES9038Proの勝ち。
Mojoは濃くてまろやかな音を出すから聴き心地が悪くないけどすべての音楽をMojoの音にしてしまう。色付けが濃すぎる。あと音場がかなり狭まって窮屈になるからイメージングという点で後退する。
特にロックみたいなジャンルはつまらなくなるはず。バンドで鳴らす音楽ってクラシックの演奏とは違う。
完璧な技術だけがすべてではなくて、無茶で下手な感じとか荒れや尖った乱暴さみたいな不完全性さえ含んでそれが魅力になるんだけど、たぶんMojoを通して聞くとそういう汚さとかエッジまで丸められて行儀よくなるはず。
出てくる音や若いVocalがMatureになりすぎて結果的に新鮮さや魅力を失いかねない。
ただ高音質化のために果たして限界まで突き詰めたアップサンプリングで何ができるのかを示しているという点で技術的にとても面白い。
プロセッサの能力で言えば最新のRyzenとかあるいはGPUなんかMojoの内部よりめちゃくちゃ速いけどそれぶん回してアップサンプリングできないのか?
MojoにできるならアルゴリズムさえあればPCでできるわけだって考えて何か作ってるオーディオ趣味のプログラマーなんて絶対いるはず。
これからDAC、アンプその他機材を買い換えるところでまだ試せてないけど、Foobar2000を使ったmp3からDSD512へのリアルタイムアップスケーリングは聞いて明確な変化があるという話。
予想ではたぶん消え去る間際の音の余韻や残響といったごく弱い音までがきちんと聞けるようになることで、現場の雰囲気や奥へ広がる空間をより感じられるようになる、という方向の変化。
それはChordがDAVEその他のDACで実現する音に近づくような変わり方なのか、それとも質的にはまた別のものなのか?