A Note

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北海道大の吉沢和徳准教授(昆虫形態学)らの研究チームは、メスがオスの体に交尾器を挿入して交尾する昆虫を、ブラジルの洞窟で発見したと、米学術誌「カレント・バイオロジー」で発表した。

このfindingじたい、生き物のsex、つまり「性別」そして「行為そのもの」という二つの意味におけるsexについて問い直しを迫るとても興味深いものだと思うね。メスがオスに挿入すること、性役割が逆転することの興味深さは、すでに、たとえば科学的なevidenceを下敷きにした奇想を売りとするSF小説などで扱われているかもしれぬ。

一般的に言ってヒトの世界ではメスがオスに挿入する行為は男性が男性性を勇気と期待をもって脱ぎ捨てるところに発生すると思われ、そして避けられないことではあるがそれはある程度倒錯した行為とみなされがちである。そのようなsexが通常のこととして遂行されている世界があるということは、知的に高度な発達を遂げた、医師や弁護士、大学教員などからなる特殊サロンの会員の紳士たちに話題を提供せずにはおかないだろう。

人間を含む生き物たちの、男女の性別を極端に性器に還元して抽象化するとそれぞれが「穴」そして「棒」と、もっとも簡素な形においてそう表せるとみんな考えていたわけだけど、それが通用しないブラジルの洞窟を北大のおそらく昆虫好きの人が見つけたわけでおもしろいことだと僕は思う。

ところで、僕は日本でこの種のサイエンスにおける重要な発見、といった記事が出るとき必ず英語圏との時間差があるのを経験上知っているので今回も「male female reversed insect」という四つのwordsでgoogleして英語のarticleを漁ったのだけどはたしてそうだったね。例えばyahoo.comがhostする下のReutersの記事:


「WASHINGTON (Reuters)」と文頭にある署名記事、ということでこれはワシントンのロイターに勤務するWillというguyが書いた文章だということが分かるわけだけど、publishされた日付は「April 17」となっているから今日May 5から数えて2週間以上前になる。Google newsで他にもこのメスがオスに挿入する昆虫に関する記事は、BBCまたスミソニアン博物館のhostするblogを含めていくつか出るわけだけどいずれもそれらがwebに表れた日付は「April 17」となっている。

だからどう、とかこれがちょっとした問題だ、と言いたいわけではないんだけど、英語圏と日本語圏との間に情報が流通し始める時間においてかなり大きな差があるわけだなとこの種の記事を読むたびにいつも思うわけね。scienceの世界の第一言語は間違いなく英語であって地震学から医学まで分野を問わず理系の99.9%の重要なJournalは英語でpublishされていると思うから別に不思議なことではないといえるけどね。

分野は違うが言葉を扱うという意味で共通する文学の世界、小説なんかも日本語で書いても日本人しか読めないけど、その人が最初から英語で書けると相手にできるマーケット自体がでかいわけだよね。だったら最初から英語で書けばいいんじゃないかと思う日本生まれ日本育ちの書き手が何人いても不思議じゃない。ただ理系の論文と小説とが違うのは、英語で育ってきたゆえに身につくネイティブの感覚とか言葉を自在に扱える感覚を持たない人が、訓練によって事実を論理的に記述する文章である論文は書けても小説は書くのが難しいかもしれないというところだ。