A Note

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 そんなある晩、ウッドローは飲み屋での“こおろぎ早喰い競争”でミリーという女と出会い、思いがけなくも激しい恋に落ちる。しかし楽しく幸せだった日々もつかの間。彼女の裏切りを知ったウッドローは、怒りと絶望から正気を失い、火炎放射器を手に狂おしい妄想の世界へと突き進んでいく。

信じていた女に裏切られた男の気が狂うことは非常に普遍的に見られる現象であって、例えばアメリカではそのような男たちの手近にショットガンやマシンガンが溢れていることも多いらしく、冗談抜きでとても危険だと思います。実際に時折、その懸念が現実化したと思われる事件も耳にする。

極度の絶望と怒りを感じた時に理不尽な暴力と破壊への欲望を抑制することができないその傾向は言うまでもなく女性よりも男性において頻繁に観察されるものであり、また少なくともその点において、男は女よりもバカであると断言して差し支えないと考えますし、僕自身男としてその種の批判を甘んじて受け入れるものです。

ところでその形態また詳細には多様な違いあれど「女に振られた男」というのは歴史上、世界中で数え切れないほど繰り返されてきた悲劇=喜劇であり、そしてそのような痛みに満ちた経験を通じてしか、この世界の豊かさまた人間の奥深さに触れることはできません。

廃油を飲まされたように黒々とした気持ちを抱えつつ、流れの遅い時間のただ中に身をおいてやり過ごすという、生きることが嫌になるような経験そのものも、生きることの大部分を占めています。

そしてそのような最低の時期において男たちは一般的に、筒状の構築物から何か定形・不定形の物質が射出されるというわかりやすいカタルシスを求めてしまいがちであるようです。例えばこの映画の主人公は火炎放射器を愛好する人物のようです…。