A Note

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"映画には夢を見せてもらいたい。なぜなら現実の世界は本当にひどいところで、金を払ってまでそんなものをありのままに見せられても気が滅入るだけだからだ" それを聞いたときその言い方にも正当なところがあると思った。映画に限らず筋書きを持つ一切の物語に通じる言い方だが、色々あっても人々の苦労は報われ、悲しみは癒され、最後には救いを提示し、受け手を勇気付けた上で日常へ帰して欲しい。そう思うのは極めて普通のことだろう。ただそう思う一方で僕が考えざるを得ないのは、ではこの残忍な世界で救われないままに生きつづける人々に対する倫理的な義務は誰が担うのかということで、"救ってやる" と簡単に言い放つような表現ばかりでは、救われない状況で生きる救われない人々の姿は隠蔽され、放置されるままになってしまう。究極的には、最後の最後に救ってしまうような表現によっては、この世界で救われないままに死んでいく人々への義務を果たすことができないだろう。


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